冬へのドアー

冬の風にみがかれた 晴れた空に

彩雲がひとつ 

忘れたように うかぶ

 

仰ぐところ ありふれた雲だけど

強い風に少しも流れていかないのは

あの雲に 一本の強い意志が

宿っているに違いない


5線譜の電線の間をすり抜けるのは

美しい音譜ではなく風切り音

北風にすべてが耐え

   すべてが黙り 沈黙す

まるで口を開ければ「寒い」

と言ってしまうのが勿体無い

かのように


冬は嫌いだ みな暗くどこかへ落ち沈む


カーンとよく響き渡るのは子供が何かをぶつけて

遊ぶ音


砂利道の向こうに建っている大きな倉庫が

ギィイと音をたてる


不用心なー 鍵をかけ忘れ 今 風にあおられ

戸が開かれようとしている


ドアを閉めてあげようと

すき間から 埃と土とすっぱい臭いがやってくる


暗い中に何かが動く気配がして 思わず手を止めた

 

なにかが ぽたりと 落ちてきた

 

よく見ると アイスクリームがとけて落ちている

それは ぽたぽたと ずっと落ちつづきやがて

足跡となった


子供達がアイスを食べながら歩いてゆく


足跡は夏の日差しに焼かれてゆく


具象 抽象の彫刻が広がっていた

夏に行った 高原美術館だ

あるものは樹の風に あるものはよく伸びた草の上に

あるものは陽の下に


そしてみな黒い慟哭を落とす


  みているのか みられているのか

  称賛されたいのか 感嘆の声が

  欲しいのか

  わからない

  

  ただ、ただ静かにそこに

  存在す

                巨大となって 

 

    とんぼが不定の動きで空気を

    賑わす

    集っては散り散っては流れ

    ロープに仲良く並び

    アイスクリームを持った子供達が

    追いかけまわす

                                               とけたアイスの足跡がついていく


                大人は美しい稜線に目を奪われ

                恋人達は響き渡るアモーレの鐘のね

                に 耳をすます

                    

美しいねいろが渡っていくとき

 

だれも冬を思わない


あの空に停まっている石でさえ

雪が降り積もる日のことなど

に気にかけない

 

とんぼがあざ笑うようにオブジェ

のまわりを交差する


ー いいだろ ぼくたちは

  何処へでも飛んでゆける

                  自由にね


                彫刻達は くうを見つめ いうのだ

                - 壊されなければ 永遠の命だ


    作家の命が 宿っている 造りあげるという 情熱が

    

    立っている    それが一本の意志だ

    

  そのまま 歩いていくと

  古城が見える 

  

  古城には 真ん中に大きなドアが

  ある 少し開いている

  

  私は閉めようとして

  閉めてはいけないと

                  咄嗟に思った    

少し開かれた向こうの黒い中で何かが動く

何だろう?

 

北風に身を縮めると 

彫刻達は 雪の中で 眠っていた

 

春まで誰ひとりとしてやってこない

 

〈 わたし達は 開ける 開けなければ

春も夏もやってこない 〉

 

声がとおっていく

 

未来はキライだ 私が希望をもちすぎるから

でもこのドアを開けなければ

もっと身近な明日も続いていかない

 

これは 開かれた始まりの入り口

 

それが今、解かったとき

 

 

ドアを思いきって開けてみることにした

 

まだこの世の中に 

こんなにたくさんの

黄金が

あったのかと


足下の踏む触(しょく) さくさくと

 

ミルフィールの音 秋 味覚

地球には いろんな音があるね

     いろんな色があるね

     いろんな事もあるね

 

でも宇宙には なーんにも ないんだ 

いつもまっくらで

コトリとも音がしないんだ


子供の頃 あんなにたくさんあった夢は

 

1つ 大人になるにつれて

 

1つづつ なくなっていって


 今は全部 消えてしまった

 

今年もクリスマスが終わる

 


 むかしはこんな小さなプレゼントでも

喜べたのに


儚く 小さな雨が降ってくる

雨つぶは地上にあるもの すべてを濡らし


樹々の緑も

土の黒も

様々な屋根の色も

 

鮮やかにさせ 生き生きと 艶やかに

 

たくさんの人が通ったかもしれないし

通らなかったかもしれない道を 歩く

 

雨つぶたちはお互いにぶつかり逢い

             共鳴し

            鳴る 

 

たまに傘をささずに行ってみようか

 

濡れればひとも一緒の 地上




-7℃

もう泣いてもいいんだよと

自分自身にしかわからない表現で

自分自身にサインを送る

 

誰もいなくなった 独りの帰りみち

外気は -7℃ 

だけど 瞳だけは 熱かった

 

凍えそうな寒さの中 月は美しく輝いている


冬の月はどうしてあんな美しいのかと

寒さに耐えて なおいっそう輝くのかもしれない

 

どうして早く言ってくれなかったのか

好きな人ができてしまったことを


もっと早く言えば こんなに気持ちが

手遅れにならなかったのに


辛く悲しいことはたくさんあった

このこともその1つとして心の中に 仕舞われていくんだね



私は

たくさん耐えてあの月のように 輝くことがあるのだろうか


貴方は最後にもっといやなこと いった

 

「 泣かれるかと思った よかった

  別れても いい友達でいたい 」


そんなこと あるわけないじゃない